「タイ人名義での土地購入」が今、本格的に摘発されている——知らなかったでは済まないノミニー問題

タイで長年グレーゾーンとして黙認されてきた「外国人によるノミニー(名義人)を使った土地・不動産購入」が、2026年に入って本格的な全国一斉摘発に発展しています。すでに推定被害額(国家経済損失)は151億バーツ超と算定されており、資産凍結・強制売却・逮捕・国外追放という前例のない厳しい結末が外国人投資家に降りかかっています。

ノミニーとは何か——30年続いた「抜け穴」

外国人はタイで土地を直接購入できません(コンドミニアムの外国人枠49%以内は例外)。そこで長年使われてきたのが「ノミニー」——タイ人の名義人を株主に立てた会社をペーパーカンパニーとして作り、その会社名義で土地を購入するという手法です。

外資規制法(Foreign Business Act)で明確に違法とされているにもかかわらず、実態としては黙認されてきました。しかし2026年、その時代に終止符が打たれました。

なぜ今、取り締まりが激化したのか

AIシステムの導入が最大の転換点です。商務省事業開発局(DBD)が「IBAS(Intelligence Business Analytic System)」というAIスクリーニングシステムを稼働させ、不審な会社構造を自動的にフラグ立てするようになりました。

具体的には「タイ人株主の申告収入が、その株主が名義を持つ数百万バーツの不動産投資額と著しく乖離している」ケースを検知します。フラグが立つと複数機関による合同捜査が即座に開始されます。主要観光地——プーケット・スラートターニー・チョンブリ——が重点調査対象エリアとして指定されています。

摘発されるとどうなるか

結果は壊滅的です。段階的に説明します。

①資産の即時凍結 違法なノミニー構造が確認された時点で、土地局が物件の権利証を即時凍結します。合法的な売却が不可能になり、投資した資金を回収するための売却すら認められません。

②強制売却または国家没収 土地法第94条(Section 94)に基づき、内務大臣が物件の強制売却を命じます。期間は通常180日〜1年。期限内に売却できなければ、土地局長官が直接管理して競売にかけます。

さらに現在、タイ内閣は強制売却ではなく「国家直接没収」への法改正を検討中です。可決されれば、投資家は一円も受け取れずに物件を失います。

③刑事罰 外国人本人とタイ人名義人の双方が、外資規制法違反で最長3年の禁固刑10万〜100万バーツの罰金に処せられます。

④国外追放と永久ブラックリスト 有罪判決後、外国人のビザは即時取り消されて国外追放。タイへの再入国が永久に禁止されます。

チョンブリを含む全国での摘発事例

チョンブリはプーケット・コー・パガン・コー・サムイと並んで重点摘発エリアに指定されています。最近の主要事例はこちらです。

  • ラヨーン:中国系バックの高級コンドミニアムノミニーネットワーク——推定被害額20億バーツの案件を捜査中
  • プーケット:ロシア系ネットワークへの一斉摘発で土地権利証と現金合計15億バーツ相当を押収
  • パンガン・サムイ:数千社の外国人関連会社を一斉調査、1波あたり1億5,000万〜2億バーツ規模の土地押収

DSI(特別捜査局)とAMLO(マネーロンダリング対策局)が合同チームを組み、ノミニー会社の設立を助けた法律事務所・会計事務所・不動産仲介業者も捜査対象に加わっています。

合法的な代替手段——外国人が土地を持つ正規の方法

タイでも外国人が合法的に不動産を保有できる方法はあります。

①コンドミニアム(フォーリン・クオータ) 建物全体の49%以内の範囲で外国人名義での購入が可能。パタヤ・バンコクで最も一般的な方法です。完全な所有権(フリーホールド)が与えられます。

②長期リース(30年) 土地局に登録した30年リース契約は法的に保護されます。更新オプションを契約に盛り込むことも可能で、長期在住者・リタイア組に現実的な選択肢です。

③タイランドプリビレッジカード(TPC)付き土地購入権 一部のスキームでは条件付きで土地購入が認められますが、要件が非常に厳しく専門弁護士への相談が必須です。

まとめ

「昔から皆やっている」「今更摘発されるはずがない」という思い込みは通用しなくなりました。特にチョンブリはAIシステムによる重点調査エリアに指定されています。

現在ノミニー構造で物件を保有している方は、今すぐタイの不動産専門弁護士に相談して合法的な構造への転換を検討することを強くお勧めします。「知らなかった」は法的な免責事由になりません。今動けば選択肢がありますが、摘発された後では手遅れになります。

参考:Chiang Rai Times(https://www.chiangraitimes.com/business/thailand-nominee-crackdown/)、Nation Thailand(https://www.nationthailand.com/news/policy/40066090)、Bangkok Post(https://www.bangkokpost.com/thailand/general/3259705/)