タイに長く住んでいると、ついつい後回しにしがちなこと——それが「遺言書」と「資産管理」の問題です。Pattaya Mailが5月24日に報じた弁護士レポートによると、タイ政府が2026年に外国人の資産・所得・税務申告の調査を大幅に強化したことで、在住外国人の法的状況が大きく変わっています。
なぜ今、遺言書が必要なのか
まず前提として、タイには「タイで作成した遺言書」と「母国で作成した遺言書」の2種類があります。日本で遺言書を作っていても、タイ国内の財産(コンドミニアム・銀行口座・車など)にはタイの遺言書がないと、相続手続きが非常に複雑になります。
従来から言われてきた問題ですが、2026年はさらに事情が複雑になっています。
税務調査強化で何が変わったか
タイ歳入局(Revenue Department)は2024年から外国人の海外送金・所得に対する課税強化に乗り出しており、2026年はその執行がさらに本格化しています。
具体的には3つの変化があります。
①海外送金の申告義務化:タイに183日以上居住する外国人は、海外から持ち込んだ送金が課税対象になる可能性があります。2024年の税務解釈変更以来、この規定の執行が厳格になっています。
②金融口座の情報共有:タイはCRS(共通報告基準)に基づき、外国政府との金融情報自動交換を実施中です。日本の国税庁ともこの仕組みが動いており、タイの銀行口座情報が日本側に共有されるケースが増えています。
③資産の透明性確認:コンドミニアム・車・銀行口座など、タイ国内に資産を持つ外国人に対して、その資金の出所・申告状況の確認が強化されています。
遺言書がないと何が起きるか
仮に遺言書なしで亡くなった場合、タイ国内の財産はタイの相続法に基づいて処理されます。
問題は、タイの相続法における「法定相続人」の順位が、日本の感覚とかなり異なる点です。タイ人配偶者がいる場合、子ども・親・兄弟姉妹それぞれの取り分が法律で決まっており、本人の意図通りに財産が分配されないケースが多く起きています。
また手続きの複雑さも問題です。外国人の遺族が日本からタイに来て、タイ語の書類を揃えて裁判所手続きをするのは現実的に困難で、弁護士費用・時間・精神的負担が大きくなります。
タイの遺言書——基本的な作り方
タイでの遺言書(遺言状)は難しいものではなく、弁護士に依頼すれば比較的スムーズに作成できます。費用の目安は法律事務所によって異なりますが、5,000〜3万バーツ程度が相場です。
必要なもの:パスポート、在タイビザ、所有する財産のリスト(コンドのチャノートや銀行口座番号など)、相続させたい人の情報。
パタヤ・シラチャ周辺では英語・日本語対応の法律事務所がいくつかあり、まずは相談だけでもしておくことをおすすめします。
「自分には関係ない」は危険
「大した財産はないから」と思っている方も要注意です。コンドミニアムが一部屋あれば数百万バーツ以上の資産です。タイの銀行口座に数十万バーツ以上あれば、遺族が引き出す手続きだけで数か月かかることもあります。
また日本にいる家族があなたのタイの財産を把握していない場合、そもそも相続手続き自体が始まらないという問題もあります。
タイ在住の日本人の皆様へ
「遺言書」と聞くと縁起でもないと感じるかもしれませんが、これは「万が一の備え」ではなく「在タイ生活のリスク管理」です。税務調査の強化・情報共有の拡大という2026年の変化を機に、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。まずは現状確認だけでも、安心感が大きく変わります。
参考:Pattaya Mail / Victor Wong(https://www.pattayamail.com/latestnews/news/why-intensified-audits-make-a-separate-thai-will-essential-for-expats-in-2026-550184)