タイのEV市場に激震が走っています。スウェーデンの自動車メーカー・ボルボが、タイ国内で販売したEX30(電気SUV)1,668台のバッテリー全台交換リコールを実施中で、5月21日には消費者保護庁(OCPB)との緊急会合でEX30の販売を即日停止することを正式に確認しました。
何が起きているのか
5月15日夜9時頃、タイ国内のオーナー宅でボルボEX30が充電中に発火・炎上。これが今回の一連の問題の引き金になりました。
実はこの火災の前から問題は報告されており、ボルボは2月に世界全体で約4万台のEX30に対してバッテリーリコールを発表しています。問題はバッテリーセルの過熱による内部ショートで、発火・火災のリスクがあるというものです。タイ国内では1,668台が対象で、全台のバッテリーモジュールを無償交換する計画です。
5月23日には別の車種・ボルボXC60でも爆発事故が発生。「ボルボにとって最悪の週」(Thai Examiner)と報じられる事態になっています。
「70%以上充電したオーナーが悪い」——この説明に消費者は激怒
ボルボ側が最初に示した「原因は推奨充電上限(70%)を超えた充電によるもの」という説明が、タイ社会でさらに火に油を注ぎました。
スパマース首相府大臣は「EVは100%まで安全に充電できると認識されているのに、70%を超えたら危険というのは一般的な理解と矛盾する」と批判。消費者保護庁には45件の苦情が寄せられており、当局はボルボとディーラーに対する民事訴訟の準備も進めています。
現在オーナーに課せられている制限はこの2つです。充電は70%以下に抑えること、充電中は建物の屋外で行うこと——つまり「自宅の駐車場で充電できない」という状況が続いています。
バッテリー交換はいつ終わる?
代替バッテリーは800台以上が6月にタイに到着予定で、5月25日から順次交換開始。全1,668台の交換完了は2026年8月を目標としています。交換待ちの間はボルボが代替車両と補償を提供するとしていますが、買い取り保証(下取り)は発表されていません。
タイのEV市場全体への影響
今回のボルボ問題は、タイのEV市場全体が抱える課題を浮き彫りにしました。
タイは2026年のEV販売台数が12万台超と過去最高が見込まれる東南アジア最大のEV市場の一つです。しかし今年はボルボだけでなく、中国系EVメーカーへの苦情も急増しています。国家消費者保護委員会には2025年後半から2026年前半にかけてEV関連の苦情が1,300件以上寄せられており、タイ政府はEVメーカー各社に対して60日以内の改善策提出を義務づけるなど規制強化に乗り出しています。
EVを「買う前」に確認すべき3つのこと
タイでEV購入を検討している在住日本人向けに、今回の件で改めて重要になったポイントを整理します。
①バッテリーの充電上限制限がないか確認する:購入前にそのモデルのリコール・安全情報をタイの消費者保護庁サイト(ocpb.go.th)で確認してください。
②ディーラーの保証・アフターサービス体制を確認する:中国系EV・欧州系EVともにタイ国内のサービス網がまだ発展途上で、修理待ちが長期化するケースが増えています。
③充電環境を事前に整える:コンドミニアム・賃貸物件の場合、駐車場での充電設備設置が許可されているか確認が必要です。