タイで最近、外国人がタイ人と衝突する事件が相次いでいます。これを受けて観光スポーツ大臣スラサック・パンチャルーンウォラクン氏が8月25日の閣議前、「問題を起こした外国人のビザを即時取り消す」と明言しました。
すでに1件が実施済み——コ・サムイで動物園オーナーへの脅迫・懸賞金をかけたイスラエル人男性のビザが取り消され、強制的にタイから退去させられています。
きっかけとなった2つの事件
コ・サムイ:動物園オーナーへの脅迫
コ・サムイで長期滞在していたイスラエル人男性「ジェイコブ」が、「サムイ・エキゾティック・パーク」のオーナーに対して生命を脅かす発言をし、「懸賞金をかける」と示唆したとして通報されました。
観光スポーツ大臣はこの件について「動物園オーナーの生命が危険にさらされていた」と言及。当局は即座にビザを取り消し、タイへの滞在を認めない措置を取りました。
プーケット:タイ人女性を蹴ったスイス人男性
プーケットの別荘の階段に座っていたタイ人女性を「敷地に侵入した」として蹴った疑いのあるスイス人男性のビザも過去に取り消されています。地元住民100人以上が別荘前に集まって抗議するという事態になり、タイ全土で大きな怒りを呼んだ事件です。
大臣が明言した「3つのアウト」
スラサック大臣は8月25日の会見で、ビザ取り消しの対象となるケースを明確に示しました。
①タイの法律・文化・慣習を無視した行動 「タイを訪れる全ての旅行者は、タイの法律を尊重し、文化に敬意を持って従う必要がある」と明言。これに反する行動を取った者のビザは取り消す。
②タイを「遊び場」として扱う行動 「タイはいかなる国籍の旅行者に対しても、タイを遊び場として扱うことや、タイと無関係な外国の対立をタイ国内で表現することを認めない」と断言。
③他者の安全を脅かす行動 観光地・観光業者・他の旅行者の安全を脅かす行為は、エスカレートする前にビザを取り消すことで問題を防ぐと説明。
大臣は「ビザ取り消しは罰則ではなく予防措置だ」と位置づけており、問題が大きくなる前に取り消せると強調しました。
政府全体での対応——TAT・大使館・航空会社も連携
今回の方針はスラサック大臣一人の判断ではなく、アヌティン首相が関係する地方当局・観光警察・地域警察に対して「迅速かつ断固たる対応」を指示したことを受けたものです。
さらにTAT(タイ観光局)は各国の大使館や航空会社に対して、搭乗前にタイの法律・文化・行動規範を旅行者に伝えるよう協力を求めました。乗客がタイに到着する前の段階でルールを周知させることで、未然に問題を防ぐ狙いです。
なお大臣は「ビザ取り消しは国籍で一律に判断するのではなく、個別の行動に基づいてケースバイケースで実施する」と述べており、特定の国籍を標的にした措置ではないことを強調しています。
最近のタイで問題視されている外国人行動のパターン
今回の方針発表の背景には、最近タイで問題視されている外国人の行動が積み重なっています。主なパターンをまとめます。
①地元住民・ビジネスオーナーへの脅迫・圧力 今回のコ・サムイの事件がその典型。「自分には力がある」という態度でタイ人に圧力をかけるケース。
②タイと無関係な国際的対立の持ち込み タイ国内でイスラエル・パレスチナ問題など、タイと直接関係のない国際的な政治対立をタイ国内で表現・デモ化しようとする行動。大臣は「タイは非紛争国家として立場を保つ」と明確に述べています。
③地元の文化・ルールへの無配慮 プーケットのスイス人事件のように、自分の「財産」「権利」を主張してタイ人の慣習・行動に暴力的に反応するケース。
在住日本人・長期滞在者への影響
今回の方針は主に観光旅行者を対象にしたものですが、長期在住の外国人ビザ保持者にも原則は適用されます。
過去の事例(スイス人男性)では長期滞在者のビザも取り消されており、「観光客だけの問題」ではありません。
在住者として意識しておきたいこと
- タイ人との口論・トラブルはその場で解決しようとせず、冷静に距離を置く
- SNSでの発言——タイ王室・宗教・文化への批判的な発言は不敬罪(コンピュータ犯罪法含む)に抵触する可能性がある
- 近隣・家主・地域との関係は穏やかに保つ
- 飲酒時の行動には特に注意が必要——酔った状態でのトラブルは重く扱われる
「タイは全ての旅行者を歓迎する——適切な行動をとる人たちを」
スラサック大臣はこう締めくくっています。「タイは全国籍の旅行者を歓迎している。ただしタイに入国する全ての人は、タイの法律を尊重しタイ文化に従う必要がある。タイを、タイに無関係な象徴的な対立のプラットフォームとして使うことは認めない」
タイは年間3,000万〜3,500万人の外国人旅行者を受け入れる観光大国ですが、「観光客は神様」という感覚は通用しなくなりつつあります。「郷に入っては郷に従え」——タイに住む・訪れる全ての外国人に改めて意識してほしいことです。
参考:Bangkok Post(https://www.bangkokpost.com/business/general/3307299/)、Khaosod English(https://www.khaosodenglish.com/featured/2026/08/25/israeli-tourists-visa-revoked-after-alleged-threat-to-samui-zoo-owner/)、Thaiger(https://thethaiger.com/hot-news/tourism/thailand-tourist-visa-revocation-foreign-misconduct)、Pattaya Mail(https://www.pattayamail.com/thailandnews/thailand-revokes-foreign-visitors-visa-over-alleged-koh-samui-threats-562851)、Chiang Rai Times(https://www.chiangraitimes.com/visas-immigration/thailand-visa-revocation/)、Thailand News(https://www.thailandnews.co/2026/08/thailand-to-revoke-visas-of-troublemaking-tourists-amid-growing-concerns/)、BBC(https://feeds.bbci.co.uk/news/world-asia-68498257)