アジア最速の男はタイ人だった——ブーンソン・プリポンが100m・200mで2冠、アジア大会2026

ภูริพล บุญสอน(プリポン・ブーンソン)、20歳。100mを9.90秒(アジア大会新記録)、200mを19.88秒(アジア記録タイ)で制し、アジア大会2冠を達成。タイ陸上史に48年ぶり・52年ぶりという2つの金メダルをもたらした、現在アジア最速の男です。

「スリン生まれのサムットプラカーン育ち。ハンドボール少年が偶然陸上に転向。母が買ってくれた最初の運動靴を履いて走り続けた少年が、アジアを制した」この物語を、タイ語ソースも含めて徹底解説します。


📋 プロフィール

項目詳細
本名ภูริพล บุญสอน(プリポン・ブーンソン)
ニックネームビュー(บิว / Bew)、テープビュー(เทพบิว=神様ビュー)
生年月日2006年1月13日(20歳)
出生地スリン県(東北部イサーン地方)
育った場所サムットプラカーン県(バンコク近郊)
身長182cm
学歴セント・ラファエル学校(小学)→アサンプション・サムットプラカーン(中高)
職業タイ警察官(สิบตำรวจตรี=巡査)・陸上選手
専門種目100m・200m
コーチポールチョン・ミーシャロン(タイ代表陸上ヘッドコーチ・警察少将)

⚡ 2026アジア大会——アジア最速の2夜

9月25日(金)——100m 3本連続で9秒台、アジア大会新記録9.90秒で金

ラウンドタイム意義
予選9.95秒9秒台でスタート
準決勝9.91秒アジア大会記録更新(旧9.92 Su Bingtian 2018)
決勝9.90秒 🥇アジア大会記録を自ら更新・金メダル

決勝では出遅れながら後半で差し切るという彼らしいレース展開。「辛抱して、走り続ける(Be patient and keep going)」——レース前に自分に言い聞かせたこの言葉通りの走りでした。

9月27日(日)——雨の中で200m アジア記録タイの19.88秒で2冠

100m制覇の2日後、200m準決勝で20.10秒(大会記録)をマークしたビューは「謝震業(Xie Zhenye)のアジア記録19.88秒を狙う」と公言。そして雨に濡れた決勝のトラックで、有言実行の19.88秒でフィニッシュ。アジア記録に並びました。

「アジアの選手が世界のトップを倒す日を目指す。次の目標はSu Bingtianのアジア記録9.83秒だ」
——プリポン・ブーンソン、100m制覇後のインタビューより


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World Athletics公式ページWorld Athletics プロフィール世界ランク57位(100m・2026年9月時点)

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🏆 全成績一覧(確認済み)

年大会種目結果
2022SEA大会(ハノイ)100m・200m・4×100m🥇🥇🥇 三冠(国際デビュー)
2022国民体育大会(ศรีสะเกษ)100m・200m🥇🥇 タイ記録2種目同時更新(16歳)
2022世界U18選手権(コロンビア)100m4位(10.12秒)/ 世界U18ランク1位に
2022アジアU18選手権100m・200m🥇🥇
2023杭州アジア大会100m🥈 銀(10.02秒)
2024世界U20選手権(リマ)100m🥈 銀(タイ初のU20世界陸上メダル)
2024パリ五輪100m出場(タイ最年少五輪出場)
2025SEA大会(バンコク)100m🥇 9.94秒(東南アジア初の10秒切り)
2025ライン・ルール大学世界大会100m🥈 銀
2026/9/25名古屋アジア大会100m🥇 9.90秒(アジア大会新記録)
2026/9/27名古屋アジア大会200m🥇 19.88秒(アジア記録タイ)

👨‍👩‍👦 生い立ち——スポーツDNAと「最初の靴」の話

両親はアスリート

ビューが生まれたのはタイ東北部・スリン県(象使いとカーンチャナブリーの文化で有名な農業の県)。幼い頃に両親の仕事の関係でバンコク近郊のサムットプラカーン県に引っ越しました。

父・ソムクアン(สมควร บุญสอน)は中距離走の選手で県レベルで活躍。母・スパワディー(สุภาวดี มรรคผล)は元バレーボール選手でタイ代表候補の経験もある。両親からスポーツのDNAと、アスリートの苦労を理解できる環境を受け継ぎました。

「お母さんがいなければ、今の自分はいない」
——ビューが繰り返し語るお母さんへの感謝の言葉

「最初の運動靴」——お母さんへの感謝の原点

経済的に決して余裕があったわけではない家庭で、最初の本格的な陸上スパイク(運動靴)はお母さんが買ってくれたものでした。その靴を履いて走り続けた少年が、アジアを制した——タイスポーツメディアがこのエピソードを「รองเท้าคู่แรก(最初の靴)」として特集するほど、ビューの人生の象徴になっています。

ハンドボール少年からの転向——偶然が生んだ奇跡

小学校(セント・ラファエル学校・サムットプラカーン)時代、ビューはハンドボール部に所属していました。しかしハンドボールコーチから「センスがない」と言われることが多く、うまくいきませんでした。

そのとき、友達と遊んで走り回る姿を見ていた陸上コーチが「あの子は足が速い」と声をかけました。ハンドボールを辞めようとしていたタイミングで陸上の道に入ったビューは、初めて走ったとき「なぜ自分はこんなに速いんだろう」と本人も驚いたといいます。

10歳で本格的な陸上へ

10歳でアサンプション・サムットプラカーン校に転校し、ここで本格的な陸上トレーニングを開始。国内合宿でタイ代表の先輩選手からスタート技術・ウエイトトレーニングを学び、急速に成長しました。


🔬 なぜビューは速いのか

①身体的優位性

身長182cmという長身と、タイ人平均より長い下肢が生み出す歩幅(ストライド)。1秒間に地面を蹴る回数(ピッチ)と歩幅の両方を高い水準で持ち合わせるのがビューの特徴です。

②後半加速型の走り

今大会の決勝でも「スタートが少し遅れた」と本人が語っていますが、後半で「じわじわ」ではなく「一気に」差し切るのが特徴。これは筋肉の速筋繊維(Type IIx)の割合が高い体質に由来すると考えられています。

③遺伝的素質×アスリート家庭

父が中距離走・母がバレーボール(瞬発系)という運動神経の遺伝に加え、「スポーツで頑張ることへの理解がある家庭」という環境が、幼い頃から才能を正しい方向に伸ばすことを可能にしました。

④コーチが早くから見抜いた「3つの素質」

タイ代表ヘッドコーチ・ポールチョン少将は2022年の時点でこう言っていました。「ビューには①意欲・②規律・③体格の3つが揃っている。将来9秒台も可能だ」。その言葉通りになりました。

⑤精神的な強さ

「プレッシャーをバネにする」という言葉を体現する選手です。「期待があるからこそ、それを力に変えてより速く走れる」と語るメンタルの強さが、大舞台でのパフォーマンスを支えています。


📊 世界との比較——ビューの位置づけ

記録保持者ビューとの差
世界記録 100m9.58秒(ウサイン・ボルト)0.32秒
アジア記録 100m9.83秒(Su Bingtian・中国)0.07秒(次の目標)
アジア大会記録 100m9.90秒(ビュー・2026)現在のチャンピオン
世界記録 200m19.19秒(ウサイン・ボルト)0.69秒
アジア記録 200m19.88秒(謝震業・ビューがタイ)現在のアジア最速タイ

200mでは、ビューの名前はウサイン・ボルト(20.13秒・17歳)とErriyon Knighton(19.84秒・17歳)に次ぐ、史上3番目に速い10代の記録(20.03秒・当時17歳)を保持しています。


🇹🇭 タイ陸上史に刻んだ「48年ぶり・52年ぶり」の意味

ビューがアジア大会で達成した2つの金メダルは、単なる「勝利」ではなく、タイ陸上史の2ページを塗り替えるものでした。

100m金メダル:1978年バンコク大会以来48年ぶり——当時の金メダリストはスチャート・ジャイスラパープ。ホスト国タイが制した記念すべき大会以来、半世紀近く途切れていた金メダルをビューが復活させました。

200m金メダル:1974年テヘラン大会以来52年ぶり——アナット・ラタナポン以来、52年ぶりのタイ制覇。ビューが生まれる32年前の記録です。


🎯 次の目標——ビューが目指す世界

  • 🎯 Su Bingtianのアジア記録9.83秒への挑戦(本人が名古屋大会後に明言)
  • 🏆 世界陸上選手権でのメダル
  • 🥇 LA2028五輪でのメダル(当時22歳で出場予定)
  • 🌍 「アジアの選手が世界のトップを倒す日」を現実にすること

🇹🇭 タイ在住者から見たビュー

パタヤ・シラチャに住んでいると、タイのスポーツニュースでビューの名前を見かける機会が格段に増えています。職場のタイ人スタッフに「บิว ภูริพลを知ってる?」と聞いてみれば、きっと「もちろん!」という答えが返ってくるはずです。

スリン生まれのイサーンの血を引く少年が、サムットプラカーンで育ち、アジアを制した——タイ人が誇りを持って語るこの物語は、タイに住む私たちが地元のヒーローとして知っておきたいストーリーです。

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📚 参考ソース