今回の洪水で、在住者・旅行者が最も注意すべき危険が明らかになっています。「浸水した道路を歩いて感電し死亡する」という事故が今週だけで複数件発生しました。
「水がある=危険」という認識は正しいですが、「なぜ危険なのか」「どうすれば命を守れるのか」を正確に理解することが重要です。
発生した感電死亡事故
①9月26日 バンコク・バンカピ区クロンチャン住宅団地
廃品回収業のスリー・ソムポン(นางสุรีย์ สมพงศ์)さん(58歳)が、バンカピ区クロンチャン住宅団地25棟の浸水した駐車場を歩いているところ感電し死亡しました。
上階の住民が午前5時30分頃「水の中で女性が倒れて動いている」のを目撃。通報を受けたラートプラオ警察署が午前8時に現場へ到着した時には、すでに水の中で意識がない状態でした。救助隊は「漏電している可能性がある」として慎重に遺体を収容しました。
同日・ドンムアン区でも男児が浸水エリアで感電。心肺蘇生により一命をとりとめましたが、紙一重の状況でした。
②9月27日 サムットプラカーン県バンプリー地区
水没した自家用車を引き上げようとしたクレーン作業員(31歳)が架線(電力線)に接触し感電。1.2メートル以上の浸水に転落して死亡しました。
異変に気づいた家主(40歳)が助けに駆けつけましたが、同じ場所の浸水水中の電流で感電し死亡——1件で2名が命を失う最悪の事態になりました。
「助けようとした人も感電する」という二次被害の典型例です。
なぜ浸水した道路で感電するのか。
「水は電気を通す」ことは知っていても、なぜ道路が危険になるのかを理解していると、より具体的に行動を変えられます。
電柱・電線の損傷:強風・倒木・車の衝突などで電柱・電線が損傷すると、電気が地面に漏れ出します。
地中ケーブルの漏電:地中に埋まっている電力ケーブルが洪水で損傷した場合、地面全体に電流が流れます。見た目には全く異常がわかりません。
建物内の電気設備の漏電:浸水した建物内のコンセント・配電盤・家電から電気が漏れ、それが浸水路に流れ出します。
「跨歩電圧(クロスステップ電圧)」という危険:漏電源を中心に地面に同心円状の電位差が生じます。両足がこの電位差の違う位置に立った瞬間、体に電流が流れます——これが「何もない道路を歩いていて感電する」メカニズムです。
感電のサインを知っておく
浸水エリアに近づいてしまった場合に役立つ感電のサインです。
「ピリピリ・じんじん・かゆい感覚」——これは電流が体に流れているサインです(タイ語でも「คันยิบๆ(カン・イップ・イップ)」と表現される)。この感覚を感じたらすぐにその場を離れる。決して立ち止まらないでください。
命を守るための行動 | 5つの原則
①浸水エリアには絶対に入らない
「ちょっとだけ」「浅そうだから」「急いでいるから」——この判断が命取りになります。浸水した道路・駐車場・庭には絶対に立ち入らないでください。
②自宅・建物が浸水し始めたらまずブレーカーを落とす
浸水が始まったら、まず自宅・建物のメインブレーカーを落としてください。これにより自分の建物からの漏電を防ぐことができます。
ブレーカーの場所を今確認しておくことが重要です。
③感電している人を見ても「素手で触れない」
スリーさんの事故で駆けつけた人が二次感電を避けられたのは、接触しなかったからです。バンプリーの事故では助けに入った家主も死亡しました。
感電者を発見したら——
- 近づかない
- すぐに1669(救急)・191(警察)に通報する
- 周囲の人を遠ざける
- 電気を切れる場合(ブレーカー等)は切る
- 絶縁体(乾いた木の棒・ロープ)でのみ接触できる
④水中・浸水エリアで倒れている人に気づいても飛び込まない
「助けたい」という気持ちは当然ですが、その水に電流が流れている可能性があります。まず救急に通報し、プロの救助隊を待つことが結果的に多くの命を救います。
⑤電柱・変電設備・電線の近くには近づかない
倒れた電柱・垂れ下がった電線・冠水した変電設備の周辺は特に危険です。たとえ電線が地面に触れていなくても、水中を通じて周囲一帯に電流が流れている可能性があります。
自宅で洪水に備える際のチェックリスト
浸水前にやること
- ✅ メインブレーカーの場所を家族全員で確認する
- ✅ 浸水した場合は誰がブレーカーを落とすか決めておく
- ✅ 電気系統のある低い場所(コンセント・延長コード)を高い場所に移す
- ✅ 浸水した場合は家電・電気設備には触れないと家族に伝える
浸水が始まったらやること
- ✅ まずメインブレーカーを落とす
- ✅ 電気が切れていることを確認してから浸水エリアに入る
- ✅ ゴム長靴を着用する(素足・サンダルは厳禁)
タイの電気事故の統計——洪水時の感電は9〜10月に集中
タイ疾病管理局(DDC)の過去の統計によると、洪水時の感電死亡者は9月・10月に集中しており、男性が女性の約2.6倍という傾向があります(「助けようとして」二次感電するケースが多いため)。
最年少の犠牲者は16歳、最高齢は79歳——年齢に関係なく起こりうる事故です。
まとめ
今回の洪水はバンコク・サムットプラカーンが最も深刻ですが、チョンブリ県でも浸水が続いています。感電事故は「自分には関係ない」と思っていた人が被害に遭うケースが多い事故です。
自宅・職場のブレーカーの場所を確認し、家族・同居人と「浸水したらまずブレーカーを落とす」というルールを共有してください。
この情報を周囲の日本人・タイ人の知人にも共有してください。一人でも多くの命を守るために。
参考:Daily News(https://www.dailynews.co.th/news/6223022/)、Khaosod Thai(https://www.khaosod.co.th/breaking-news/news_10413956)、TNnews(https://www.tnews.co.th/social/social-news/660142)、Kapook(https://hilight.kapook.com/view/255144)、Sanook(https://www.sanook.com/news/9899402/)、Thai Examiner(https://www.thaiexaminer.com/thai-news-foreigners/2026/09/27/flooding-tragedy-in-samut-prakan-near-bangkok-two-die-from-electrocution-after-family-car-was-submerged/)、Khaosod English(https://www.khaosodenglish.com/news/2026/09/27/one-dead-one-unconscious-after-electric-shock-in-flooded-samut-prakan-village/)、Thai PBS・疾病管理局統計(https://www.thaipbs.or.th/news/content/48817)