燃料高騰・物価上昇が続く中、タイ政府がついに動きました。4月29日の閣議で正式承認された「新段階別電気料金制度」は、20年以上手つかずだった料金体系をゼロから作り直す大改革です。6月の請求分から適用されるこのルール変更、パタヤ在住の外国人はいったい「得」なのか「損」なのか——仕組みから計算方法まで徹底解説します。
なぜ今、電気料金を変えるのか
まず背景を整理します。タイの電気の約7割は天然ガス(LNG)を燃料とした火力発電で賄われています。このLNGの多くを中東・カタール・オーストラリアからの輸入に頼っているため、2月下旬に始まった中東戦争とホルムズ海峡封鎖は直撃でした。
LNG価格は危機前の1MMBtu(英国熱量単位)あたり約12.5ドルから最高24ドル超まで急騰。その結果、タイの電気料金に含まれる「燃料費調整額(Ft)」が膨らみ、現行の料金は1ユニット(kWh)あたり3.95バーツと過去最高水準に張りついています。
エネルギー大臣アカナット・プロムパン氏は「現行のフラット料金制度は電力の大量消費者を優遇しすぎている」と指摘。**「使う量が少ないほど安く、多いほど高くなる」**累進課税型の新制度への移行を進めてきました。
新料金制度の仕組み——3段階の料率
新制度では、月間の使用量に応じて3段階の料率が適用されます。
| 使用量(月) | 新料率(kWh/バーツ) | 現行料率との比較 |
|---|---|---|
| 0〜200ユニット | 上限3.00バーツ | 現行3.95より ▲0.95バーツ安 |
| 201〜400ユニット | 3.95バーツ | 現行と同水準 |
| 401ユニット以上 | 5.00バーツ | 現行より ▲1.05バーツ高 |
ポイントは**「全量に同一料率がかかるのではなく、各段階の量にそれぞれの料率がかかる」**点です。例えば月300ユニット使う家庭の場合、最初の200ユニットは3.00バーツ、残り100ユニットが3.95バーツで計算されます。全量に3.95バーツが適用されるわけではありません。
対象は一般住宅のみ。飲食店・バー・ホテルなどのビジネス用途、工業用、農業用、時間帯別メーター(TOU)契約には適用されません。
あなたの家は「得」か「損」か——具体的に計算してみる
ケース①:1人暮らし・エアコンをほとんど使わない(月150ユニット)
| 現行 | 新制度 | |
|---|---|---|
| 電気代 | 592バーツ | 450バーツ |
| 差額 | — | 月142バーツ安 |
→ 得。年間で約1,700バーツの節約。
ケース②:2人暮らし・エアコン1台を日中使用(月250ユニット)
| 現行 | 新制度 | |
|---|---|---|
| 電気代 | 988バーツ | 795バーツ |
| 差額 | — | 月193バーツ安 |
→ 得。最初の200ユニット分の料金が下がる恩恵を受けられる。
ケース③:エアコン2〜3台を常時使用(月500ユニット)
| 現行 | 新制度 | |
|---|---|---|
| 電気代 | 1,975バーツ | 2,180バーツ |
| 差額 | — | 月205バーツ高 |
→ 損。400ユニット超の部分が5バーツ適用になるため値上がり。
在住外国人が特に気をつけるべき「大家問題」
タイ法律では、3戸以上を管理する大家は入居者に公式料金以上を請求してはならないと定めています(2018年施行、2025年末に執行が強化)。しかし実態として、多くのコンドミニアムや賃貸物件では独自の割増料金(7〜9バーツ/kWhなどを設定しているケースも)が横行しています。
6月から新制度が始まることで、この問題が再燃する可能性があります。特に「電気代は大家に支払い、大家が電力会社に一括で払っている」タイプの賃貸では、新制度の恩恵が入居者に届かないリスクがあります。
今すぐ確認すべきこと:
- 契約書に「1ユニット何バーツで請求されるか」が明記されているか
- 毎月の請求書を大家から受け取っているか
- 電力会社(PEAまたはMEA)の正式メーターを自分で読めるか
疑問や問題がある場合は、タイ消費者保護委員会(OCPB)または「1584」ホットラインに相談できます。
ソーラーパネル導入が「6月以降に得になる」理由
今回の閣議では電気料金改定と同時に、屋上ソーラーパネルの普及策も承認されました。
- 申請の簡素化:ワンストップ窓口(PEAまたはMEA)で処理、設置申請は7〜30日以内に完了
- 月々の支払いが「設置前の電気代以下」になるよう政府が低利ローンを用意
- 売電制度(フィードインタリフ):余剰電力を2.20バーツ/kWhで電力会社に売却可能(10年契約)
- 申請受付開始は6月以降の予定
月400ユニット超の大口ユーザーにとって、5バーツの高額料率を払い続けるより「ソーラーパネルを設置して自家消費+売電」のほうが経済的に有利になる計算です。一般的な3kWpシステムの設置費用(8〜13万バーツ)は、現在の電気代水準なら5〜8年で回収できるとされています。
まとめ
タイの気候でエアコンなしに生活するのはほぼ不可能です。「月何ユニット使っているか」を把握している方は少ないかもしれませんが、これを機にメーターを確認してみましょう。一般的な1ベッドルームのコンドミニアムで、エアコンを適度に使う生活なら月200〜350ユニット程度が多く、新制度では「やや得」か「ほぼ同額」になる方が大半と見られます。
6月の請求書が届いたとき、旧料金と新料金を比べてみてください。もし大家からの請求額が変わっていない・または上がっているようなら、契約内容の再確認をおすすめします。


